OurStory
私たちは長年美容の仕事をしてきましたが、ヘナなどの天然素材で痛んだ髪が甦ることなどたくさん経験してきました。
私たちが美容に使える天然素材を探していることを知って、10数年来の日本に住むモロッコ人の友人がモロッコに昔から伝わる黒い石のせっけんがあると教えてくれました。
その後モロッコを訪れた時に市場で見つけた小さな石のかけら。
「これがせっけん?こんな石で顔や髪を洗うなんて・・・」
と思い、つい見過ごしてしまいました。
帰りの飛行機で隣り合わせたモロッコの人が、とても日本語が堪能で、黒い石の石けんの話をしてくれました。
それは石に見えるけど水に溶ける粘土で、泥状にして使うことや、昔から石けんやシャンプーのように使われていることなど教えてくれました。
「ああ、友人が教えてくれた石のせっけんのことだ」
もしその人と隣り合わせることが無かったら、やりすごしたまま、その存在すら忘れてしまったでしょう。買ってくればよかったと悔やみました。
たまたま隣り合わせたモロッコの人がていねいに解説してくれたおかげでそしらぬ顔をして通り過ぎてきたあの黒い石に急に執着し始めました。
帰国してモロッコ大使館からの情報では、黒い石はガッスールと呼ばれているもので、それを扱う人や会社のことがわかりました。
早速サンプルを送ってもらい使ってみたところ、とても良い使用感で素晴らしい素材と直感しました。
シャンプーなど工業製品が出回る以前は泥やふのりで髪を洗ったことがあると母から聞かされたことがあります。泥パックなども昔からある美容法です。
もっといろいろ試したくてモロッコの会社に連絡するのですが、アラビア語の人がいつも電話に出ます。その当時は興味があってアラビア語を勉強し始めていましたが、習いたてのアラビア語ではあいさつするのがやっとで閉口していました。
その後何度も電話を掛けるもアラビア語の人ばかりでしたが、ある時、英語が話せる人が電話に出ました。それは偶然にもガッスール社の社長でした。そしてすぐに会いに行くことが決まりました。
立抗では12世紀より変わらぬ手掘りでガッスールが採掘されます。採りたてのガッスールは水分を含んでいて爪で傷つくほど柔らかくつややかなセピア色をしています。ガッスールは雲母の仲間なので何層にも何層にも重なりがあります。手掘りで採掘する時も剥がし取るような感じです。
採掘されたガッスールは水に溶かされ、不純物を取り除かれ、コンクリートテラスにまかれ、風と太陽で乾燥されます。出来上がったガッスールの小片は袋詰されて出荷されます。
モロッコ国内の市場では今でもガッスールのプレート状のものがそのまま売られ、昔ながらの方法で使用されています。
ガッスールとの再会が果たせると同時にガッスールのすべてを知らされました。
皮膚科と産科の女医さんたちにパッチテストをしていただきました。
アトピー性皮膚炎の方を含む40名の方々にお願いしました。
その結果100%陰性で問題が無いばかりか、アトピー性皮膚炎の治療の補助剤としても有効という見解をいただきました。
テストの結果が商品開発へのGOサインとなり、希望がもたされました。
モロッコ大使館の方のお勧めもあって、1998年国連ユ二ド日本モロッコ投資促進会議がモロッコで行われましたが、その会期中にユ二ド副所長の立会いのもとにガッスールの日本正規総代理店の契約をモロッコガッスール社との間で交わしました。外国でのガッスールの使用状況は、ヨーロッパの数カ国とカナダでは既に製品化されておりました。モンモリロナイトに属する粧配基として製品化を進めることにしました。
次なる壁は生菌数の問題でした。
山から掘り出されたガッスールはモロッコ国内で粗製されてはいるものの、生菌数が多く日本の化粧品基準にはとうていあてはまりません。
色々な滅菌方法とテストを繰り返し、ガッスールにあった滅菌方法を見つけ出しました。
2000年にはシャンプーと石けんを製作し、ギフトショウに出展しました。